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重要事項説明の今後のあり方等について ~不動産研究の交流から~ [不動産関係]



「重要事項説明」の今後のあり方等について ~不動産研究の交流から~

1.現状認識
 宅建業者が業務遂行上最低限遵守しなければならない法律は宅建業法である。この中で特に重要なのは「重要事項説明」に関することであり、宅建業法の根幹を成すと言っても過言ではないと思われる。ここ数年、「重要な事項の説明」の見直しの機運が高まり、平成18年12月20日、業法47条1号の改正規定が施行され、さらに同日「不動産取引における消費者への情報提供のあり方に関する調査検討委員会」が行った重要事項説明の合理化に向けた見直しについての報告書が出された。また、平成20年6月13日、「流通市場研究会」の中間的取りまとめにおいても、消費者により適確な情報提供を行うために「重要事項説明制度」の見直しを図ることが必要であると位置づけた。現在、「重要な事項の説明」について規定しているのは業法35条と業法47条1号であるが、今後見直しの中心となるのは業法35条であろう。
 なお、現在、国土交通省の「社会資本整備審議会産業分科会不動産部会」において、中古住宅の促進に係る消費者への適確な提供の一環として「告知書」のあり方、建物インスペクションの導入とともに重要事項説明書の見直しが議論されているようである。
 
2.限定列挙と例示列挙について
重要事項説明を議論するとき問題となるのは、業法35条1項が「限定」なのか「例示」なのかということである。限定説に立てば業法35条1項各号(現在は14号まで)だけを説明すればよいことになるが、例示説に立てばそれだけでは不足であるということになる。例示説の根拠は業法35条1項本文の「少なくとも次に掲げる事項について、・・・・・・説明をさせなければならない」であり、現在は例示説が主流と思われる。
しかしながら、行政庁においては、例示説を前提としつつも、処分をするとき業法35条1項各号に該当しないときは、業法35条違反を問わず他の条項で処分せざるを得ず、また国土交通省の処分基準もそれを前提に作成されていると思われる。
なお、私見としてはスルスヤさんが提唱されている「相対的説明事項」と「絶対的説明事項」に分けて整理した方がわかりやすいと思われる。

3.重要事項説明の合理化について
 業者は、重要事項説明を、例示説を前提として作成しているため、説明項目が多岐に及んでおり、「内容がよくわからない、時間がかかりすぎる等」の問題が指摘されている。そこで浮上してきたのが重要事項説明の合理化であるが、果たして合理化は可能であろうか。以下は、仲介物件、新築物件に分けて可能かどうか考察したい。
(1)仲介物件
  仲介物件は個別性が高く、物件によって重要な事項は千差万別であり、業法35条1項各号の項目を選別し一律に省略することは難しいと思われる。また、消費は消費者にとって「何が重要で何が重要でないか」を判断することはできないと思われるため、消費者の「購入動機に影響を与える重要な事項かどうか」は業者が判断することになると思われる。
結論としては、業法35条1項各号記載事項の説明を省略したとしても説明時間の短縮にそれほど影響はないと思われるので、重要事項説明書に記載した事項はすべて説明すべきである。
(2)新築物件
  新築物件のうちマンションについては、法令上の制限の省略は可能であると思われるが、戸建は仲介物件同様に個別性が高いため、一律に省略することは難しいと思われる。
(3)賃貸借
  賃貸借の場合、業者が写し等を事前に交付するケースは少なく、また、説明事項も売買に比べ少ないため、あえて省略する必要はないと思われる。
(4)その他
さらに、法35条の2「供託所等に関する説明」については、近時の業者の倒産等を考慮すると単に営業保証金の供託所の所在地もしくは保証協会の社員である旨を記載し説明するだけではなく、営業保証金の還付請求手続きについても説明を要することになるかもしれない。

4.業者間取引の合理化について
 業者間取引における重要事項説明の省略については、賛成である。ただし、売主の属性に関係なく、仲介業者が取引に介在し、買主業者に重要事項説明を行う場合も同様の対応をすべきと思われる。なぜなら、業者間取引における説明の省略は買主がプロの業者を前提としているからである。

5.結論
 消費者へ適確な情報を提供することを目的としている重要事項説明の項目はどれも重要な事項であるため、基本的にはすべての項目を説明することが必要であると思われる。重要事項説明の合理化の議論については、重要事項説明がⅰ長時間に及ぶこと、ⅱ専門用語が多く消費者が理解できないこと、ⅲ重要事項の優先度等を勘案し、買主消費者等の理解を深めることが目的と思われるが、一部項目を記載のみに限定しても大きな違いはないと思われる。
重要事項説明を新築青田売り(特にマンション)、中古売買(土地含む)の媒介、賃貸借の代理・媒介に分け、議論する必要があり、その中から合理的な重要事項説明のあり方を見出す必要があると思われる。


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