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宅地建物取引業法47条の疑問 [不動産関係]

 現行の法第47条第1号の規定は平成18年に改正された。従前は、「宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、《重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為》をしてはならない。」と規定されていた。
 この従前の規定では、「重要な事項」とは何であるか明確でないと一部の行政担当から主張されていたため、「重要な事項」を明確にするため改正したもので、改正前の規定と実質的に変わりはないとされている。

 法律条文だけでは明確でないなら「宅地建物取引業法の解釈運用の考え方」等で示すべきであり、法律条文を改正する必要性があったのかは疑問である。改正前の規定と実質的に変わりない解釈したいが、どうも無理なように思われる。改正により不告知禁止の重要な事項が縮小緩和され、消費者保護の制度が後退してしまった感じがする。

 改正前の規定は、「宅建業務」の全般に関する禁止規定であって、宅建業務の全過程における禁止規定であったから、売買等の契約締結より以前から取引行為が完了した後であっても、宅建業務の範囲に含まれる行為であれば、継続して、「重要な事項」について、故意による不告知と故意による不実の告知が禁止されていた。

 ところが、改正後は、宅建業務ではなく「売買等の契約に係る業務」行為のうち、①売買契約等の締結を勧誘するに際し、②売買等の申込みの撤回や売買契約等の解除に際し、③宅地建物取引により生じた債権の行使に際してに限定されており、売買等契約の①②③の時点において、故意による不告知と故意による不実の告知が禁止されることになり、適用される業務範囲が縮小され、適用される期間も限定的で分断された規定になった。

 また、改正前は、「全ての重要な事項」について、故意による不告知と故意による不実の告知が禁止されていた。しかし、改正により、不告知が禁止される事項は、重要であるか否かに関係なく「次の4事項」に限定した。①法第35条第1項に規定されている重要事項(絶対的重要事項)、②営業保証金の供託等、③法第37条の契約書に記載されるべき事項、④法第32条の誇大広告の禁止に規定されている事項等に限定された。

 このため、現在の法47条の規定は、媒介契約の勧誘行為時における行為などに適用できず、青田売りマンション等における売買契約締結後に発生した事項に係る行為についても適用できない。さらに、相対的重要事項についても故意に不告知があっても適用できないことになり、消費者保護の規制が後退してしまった規定になったように感じられる。

 青田売りマンションにおいて、売買契約の締結後に、建築基準法等の改正により引渡時には既存不適格マンションとなる場合、また、住宅に重大な構造欠陥あることが判明した場合、中古マンションが事故物件であった場合、これら故意に告知せずに引渡した場合にも適用できる規定であってほしい。

 なお、このような場合には、第65条1項や同条2項5号の適用を主張する考えもあります。



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