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不動産業と宅地建物取引業 [不動産関係]

不動産業と宅地建物取引業

 「不動産業」とは、不動産に係る取引全般を対象とする業種である。その範囲は広く、業務内容を定義することは困難である(一般的に、不動産売買業、不動産賃貸業、不動産管理業に分類されている)。この不動産業の範囲内に宅地建物取引業が含まれる。つまり、宅地建物取引業は不動産業の一部である。この不動産取引業(不動産業)を直接に規制する法律は我国に存在しない(但し、不動産取引を個別に規制する法律は存在する)。

 「宅地建物取引業」とは、①宅地建物取引業法で宅地建物とされているものを、②不特定多数を相手として反復継続する業務として、③売買(交換)契約したり、売買(交換)契約や貸借契約を媒介や代理する行為である。これら①②③の全てを満たす行為だけが宅地建物取引業とされている。このため、①②③のうちのどれか一つでも欠ける行為は宅地建物取引業ではなく、不動産取引(不動産取引業)となる。なお、宅地建物取引業の認定に際しては、営利目的の有無は問わないとする考え方が通説である。

 宅地建物取引業法は、不動産業の全てに適用される法律ではなく、宅地建物取引業に該当する業務についてのみ適用される法律である。このことから、宅地建物取引業に該当しない不動産取引のみを業として営む場合には、宅地建物取引業の免許は必要ない。賃貸ビルや賃貸マンションの貸主(所有者)などは免許はいらない。

 そこで、宅地建物取引業法による宅地に該当しない土地を取引する行為は、②③に該当しても宅地建物取引業ではない。また、宅地建物取引業法により宅地建物の取引でも、②に該当しなければ③に該当しても宅地建物取引業ではない。なお、貸借の場合には、自らが貸主と借主になる場合は、①②に該当しても宅地建物取引業ではない。サブリース(転貸)でも同じく宅地建物取引業に該当しない。これらの取引は不動産取引(不動産業)となる。

 宅地建物取引業に該当しない不動産取引業は、宅建免許を取得することなく営むことができる。このため、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法による業務停止の行政処分を受けた業務停止期間中でも、宅地建物取引業に該当しない不動産業を継続して営むことができる。このため、宅地建物取引業者は業務停止期間中でも事務所を閉鎖する必要はない。


◆宅地建物取引業に該当しない不動産取引の事例

〇宅地建物取引業法による宅地でないため、宅地建物取引業に該当しない不動産取引として、用途区域外に存在する土地(土地の種目は問わない)を宅地に使用する目的なく売買する行為。外国の土地を売買する行為等。

〇宅地建物の貸借ではない契約(排他的な占有が移転しない契約)であるために、媒介や代理行為をしても、宅地建物取引業に該当しない行為として、駐車場利用契約(更地の駐車場でも同じ)、倉庫利用契約、デパートなどの出店契約、ホテル旅館等の利用契約、ウイクリーマンション契約、貸会議室、運動場等の利用契約、レンタルオフィス契約等がある。

〇宅地建物の取引でなく、管理行為であるために宅地建物取引業に該当しない行為として、賃貸契約の更新契約、宅地建物の明渡請求行為、マンション管理業、賃貸物件の管理業等がある。

〇外形的に宅地建物取引業の行為とは見なされない程度の行為であるために、宅地建物取引業に該当しない行為として、転売目的なく取得し所有する数個の宅地建物を現状(土地造成工事や新築・増築工事をしない)で、宅地建物取引業者の媒介により、反復して売却する行為。他人が所有する宅地建物をたまたま一回限り売買契約や貸借契約を媒介・代理する行為。

〇相手方が特定している(不特定多数を相手としない)ため、宅地建物取引業に該当しない行為として、会社が当該会社の社員にだけ特定の宅地建物を分譲する行為、学校法人が当該学校の学生にだけ特定の賃貸物件を媒介する行為、地主が借地人に当該借地に係る土地を売却する行為、地主が借地している当該借地権を購入する場合等がある。



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