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駐車場契約と宅建業法 [不動産関係]

駐車場契約と宅建業法
/ (音声はこちら「宅建契約の話  YouTube」)
ヒント
利用者に駐車場の占有権が発生する貸借契約であるか。
利用者に占有権は生じない、駐車場を利用するだけの契約なのか。

市街地に存在する、月極駐車場を借りるとき、宅建業者の媒介により、契約締結することが多い。
このため、駐車場契約を媒介する行為は、宅建業であると勘違いしている者がいる。
駐車場契約が宅建業に該当するのであれば、重要事項説明が必要になる。
しかし、重要事項説明している事例は、ほとんど見当たらない。
なぜでしょう。

宅建業とは、宅建法による宅地建物についての取引行為に限られている。
このため、駐車場契約は、宅地建物の取引に当たる、賃貸借契約の媒介であるか、否かを検討することになる。
賃貸借契約であれば、これを媒介すれば宅建業になる。
しかし、賃貸借でないなら、媒介しても宅建業にはならない。

 仮に、駐車場契約が貸借契約だとすると、駐車場の「特定区画」を賃借人に引渡すことになります。
賃借人は、引渡しを受けた駐車場の特定区画に占有権、つまり、駐車場を維持管理する権利と義務を持つことになる。
そうすると、貸主の占有権は、賃借人の占有を通しての間接占有になります。
これだと、貸主は賃借人の承諾なく、駐車場に自由に出入りできなくなり、駐車場の維持管理に支障が生じてしまいます。

 迷惑駐車されても、駐車場への出入りを拒否されると、管理人は自動車を移動することすら困難になり、駐車場としての機能が麻痺することも生じる。
使用料を滞納したときは駐車場の使用停止でなく、駐車場の明け渡し請求しなければならなくなります。
駐車場の利用者に、このような権利まで認める必要はないのです。

 また、駐車場契約は、車を駐車するために締結する契約である。
このため、利用者は、基本的に駐車できれば、駐車場内の同一条件であれば、どの区画であっても契約目的は十分に達成でき満足できるものである。
つまり、宅地建物の貸借契約であれば代替性は否定されますが、駐車場契約には代替性があります。

 利用者は、駐車場を管理する気など毛頭ありません。
また、駐車場の所有者や管理者にも、利用者に管理させる意思など持っていません。
つまり、駐車場契約には、利用者に、駐車場を占有させる内容は存在しないのです。

 私は、利用者に占有権が生じなければ賃貸借ではないと考えています。
不動産貸借契約で借主に占有権が生じない契約は存在するのでしょうか。
利用者に占有権が生じない駐車場契約を、賃貸借契約であると、実態を無視し事実誤認していると考えられます。
駐車場契約は、車を駐車するために、駐車場を賃貸借するものではない。車を駐車するために「駐車場を利用するだけ」の契約なのである。

 現在、有力な主張に、駐車場契約は宅地建物の賃貸借契約であるから、媒介(代理)することは、本来、宅建業であるが「運用上、宅建法の適用を除外にしている」とか、「一時使用契約だから適用除外される」との主張がある。契約の対象面積が狭いことが理由のようだ。

 これは、駐車場契約を賃貸借契約であると誤認した主張を前提とした、誤った解釈であると思われる。都心では土地一坪が数百万円するし、駐車場の月額使用料は十数万円することもあり、時間貸駐車場の利用料でも1時間につき数百円するのが現状であるから、対象面積が狭いことを理由に、賃貸借契約であると認めながら、宅建業から除外する根拠も合理性もない。

 最も、賃貸借契約だと主張する立場にあっても、違和感から賃貸借を否定するような約定(管理人は自由に出入りできる。管理人が維持管理する。賃借人に占有権は認めないなど)を取り交わして、平然と賃貸借契約だと主張しているのです。

 駐車場の形態として、更地、屋根付建物、駐車場ビル、機械式などがあり、契約方法として、コインパーキング方式や月極契約方式の駐車場などある。いずれの形態の駐車場であっても、また、いずれの方式での契約であっても、「駐車場施設の利用契約」であって賃貸借契約ではない。だから、駐車場契約を媒介しても宅建法は適用されない。重要事項説明する必要はない。媒介報酬の制限も受けない。また、施設利用であるから使用料に消費税が課税されます。

 次の施設も賃貸借ではなく、利用者に占有権が生じない施設の利用契約であるから、契約を媒介しても宅建法の問題は生じない。
ホテル、貸会議室、ウイクリーマンション、家庭農園、運動場、テニスコート、テナント出店契約など

■余談。
駐車場契約は、宅地の賃貸借であるが、宅建法の適用を除外されるとの考えが、なぜ生じたかを考えても実益がないが、背景は次のようだったと、私は推測している。
 昭和50年頃、賃貸仲介業のほとんどは、小規模で実質的には個人事業の、宅建業者により行われていた。
① 昭和47と55年の宅建法改正され、
(物件説明から重要事項説明に改正、賃貸借の仲介でも重要事項説明することが徹底化された)。業界から、駐車場契約の報酬は、低額であり、事務量が増えるため説明を省略したい要望があった。
② 駐車場契約の実態を誤認していた。(つまり、駐車場契約は賃貸借であると信じて疑わなかった)。
③ 当時、機関委任事務で実質的に行政を担った都道府県の対応がまずかった。(業者の要望を認めるにも、その根拠を明確にできなかった)。




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