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業務停止処分を受けたときの業務 [不動産関係]

業務停止処分を受けたときの業務
(音声はこちら「宅建契約の話」)

宅建業者が、宅建法による業務停止の行政処分を受けるときは、①業務停止の期間、②業務停止の範囲、③処分の理由が明示された通知書により処分される。この処分通知が被処分者となる宅建業者に到達することで行政処分の効力が生じる。このため、行政処分の通知が発信されても、被処分者である宅建業者が受領するまでは行政処分の効力は生じない。
 なお、行政処分の前に必ず聴聞会が行われるので、宅建業者は、そろそろ行政処分されるであろうことは推測できる。そこで、免許取消し処分になると推測されるとき、行政処分される前に廃業届する宅建業者もいる。

 〇期間の指定の例
 本処分通知書を受領した日の翌日から6月間
 令和4年3月1日から令和4年8月31日まで
 〇業務の範囲の指定例
 業務の全部停止(当該免許に係る全ての業務)
 東京都内での業務の全部停止(東京都内での業務だけ停止。他県では営業できる)
 新宿支店の業務の全部停止(新宿支店だけ業務停止、他の支店は営業できる)

 業務停止期間に宅建業することは禁じられる。しかし、これには例外がある。業務停止期間が開始する日より前に締結された宅建取引契約は、契約どおりに履行しなければならない。つまり、禁止されるのは「新規に宅建業すること」である。既に締結している宅建取引契約については、業務停止期間であるか否かを問わず契約どおりに履行しなければならない。既に締結している媒介契約の処理状況報告などもしなければならない。行政処分されたことを口実にして取引相手方への履行遅延するなど迷惑をかけることは許されないのである。

◆禁止される行為の事例
①宅建業に係る売買、交換に関する広告
②宅建業に係る貸借に関する媒介・代理の広告
③宅建業に係る新たに締結する売買、交換契約の勧誘行為と対応
④宅建業に係る新たに締結する賃貸契約についての媒介の勧誘行為と対応
⑤宅建業に係る新たに売買、交換の契約を締結すること。その関連事項。
⑥宅建業に係る新たに売買、交換、貸借の契約を媒介・代理すること。その関連事項。
⑦宅建業に係る媒介契約を締結すること。媒介契約の更新契約を締結すること

◆禁止されない行為の事例
①業務停止開始日の前日までに締結された売買、交換契約に係る履行行為
②業務停止開始日の前日までに締結された媒介契約に係る処理状況報告
③宅地建物を自ら貸借する行為(宅建業に非該当)
④宅地建物の施設利用契約と媒介(宅建業に非該当)
⑤宅地建物に係る出店契約と媒介(宅建業に非該当)
⑥宅地建物に係る駐車場契約と媒介(宅建業に非該当)
⑦宅地建物に係る賃貸管理業務(宅建業に非該当)
⑧宅地建物の贈与契約関係業務(宅建業に非該当)
⑨宅地建物に係る工事請負契約関係業務(宅建業に非該当)
⑩宅地建物に係る工事を施工すること(宅建業に非該当)
⑪モデル・ルームや現地案内所を設置業務(勧誘接客行為に非該当)
⑫販売広告やパンフレットを作成印刷業務(勧誘接客行為に非該当)

業務停止期間中であっても、既に契約締結済の業務に係る行為については、顧客の不利益を避ける必要があり、継続して遂行しなければならない業務がある。また宅建業に該当しない業務は継続して営むことができるため、事務所(店舗)を閉鎖する必要はない。

宅建業者が、業務停止の期間中に宅地建物の売買契約等を締結した場合、当該売買契約は有効に成立するのか。それとも無効や契約解除事由になるのかについては、通説的な解釈によれば、宅建業法の行政処分は公益目的の公法関係であるから、民事関係の売買契約には影響を与えないので売買契約は有効に成立すると解釈されている。
 しかし、当該契約が宅建法に違反する行為であるため、消費者の感情として取引を中止したいと考えることもやむ得ない事情と考えられ、消費者の選択により、契約解除に応じさせる行政指導が行われることもある。

宅建業者が、業務停止期間中に宅建業すると免許取消の行政処分される。そこで、他人に発覚しない方法で宅建取引しようとの考えで行動すると後悔します。宅建取引は、多くの関係者が関与しなければ完結できない取引であり、処分を受けると同業者から注目されるため、発覚を免れることは不可能に近いのです。


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