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賃貸住宅での自殺による損害賠償額 [不動産関係]


賃貸住宅での自殺による損害賠償額

宅建業者が、自殺物件について賃貸借契約を媒介する場合は、心理的嫌悪物件に該当する物件であるため、自殺行為時から5年間、賃借人に対して自殺物件である旨を重要事項説明において説明しなければならない。このため、少なくとも自殺時から5年間は、正常家賃で賃貸することは困難である。そこで、少なくても5年間は家賃を減額して賃貸することになる。

家賃をどの程度まで減額すれば、入居者が現れるかは不確実であるが、自殺行為からの年月の経過により嫌悪感が軽減すると考えられるので、経過年数に応じた減額家賃を設定して募集すれば、入居を見込むことができる(公的賃貸住宅では事故物件として一定期間は軽減家賃として募集する事例もある)。例えば、自殺から1年~2年間の家賃を50%程度、3年~4年間の家賃を60%程度、5年~6年間の家賃を70%程度に設定すれば、自殺から5年間の家賃収入は、通常家賃収入の60%程度を見込まれる。

家賃収入の減収は、賃借人による「善良な管理者としての注意義務」に反した賃借人の故意による自殺行為によるものであるため、その保証人や相続人に損害を賠償する義務が生じる。しかし、賃借人の保証人や相続人は、その全額について賠償する責任を負う必要はない。なぜなら、賃貸人は、賃貸事業者であるから賃貸事業におけるリスク(賃借人が生活の本拠として使用する賃貸借においては自殺もあり得ること)を予見することが可能なものとして事業を行っており、この賃貸事業のリスクを考慮して賃料を決定すべき事業であるからだ。

そこで、自殺による損害賠償の問題は、賃借人の保証人や相続人による賠償責任と賃貸人のリスク負担の調整問題である。一般的な自殺においては、貸主と借主側とで50%程度づつの負担とするのが妥当と考える。このことから訴訟外での和解においては、5年間に見込まれる家賃収入の減額40%については、貸主と借主側が各50%(5年間の家賃の20%)づつ負担することとし、貸主は、賃借人の保証人や相続人に対して、賃料の12月分相当額の損害賠償を請求できると考える。

なお、賃借人が病死や自然死した場合には、損害賠償は請求できないと考える。自殺には賃借人に確定的な故意あるが、病気や自然死には確定的な故意はないと考えられ、生活の本拠地として住宅を賃貸する賃貸事業は、賃借人に対する生活支援的な事業であり、一定範囲内で発生するリスクは事業者が負担すべきであるからだ。また、取引対象住宅における病死や自然死は、一般的に重要事項に該当しないと考えられている。



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