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UR賃貸住宅の媒介に重要事項説明は必要か [重要事項説明書]

UR賃貸の媒介と重要事項説明  
(音声「宅建契約の話」)

ヒント
UR都市機構の宅建行為に宅建法は適用されない。
UR都市機構が所有や管理する宅地建物に宅建法が適用されるか。
UR都市機構と宅建業者が共同で宅建業したとき、宅建業者に宅建法は適用されるか。

 UR都市機構の行為に宅建業法は適用されない。(その根拠は、独立行政法人都市再生機構法施行令第34条第4号の規定により、宅建法第78条第1項の行政機関とみなされる)。このため、UR都市機構は宅建業の免許を取得することなく宅建業を自由に営むことができる。宅建業法の規制や制限を全く受けることなく、宅地建物を売買したり交換したり、宅地建物の売買や貸借の媒介(代理)することもできる法人である。

 このことは、UR都市機構が所有や管理している宅地建物には宅建業法が適用されないと解釈してはならない。
宅建法2条に該当する宅地建物であれば、誰が所有しているか、誰が管理しているかを問わず、宅建法が適用される宅地建物である。つまり、宅建法の宅地建物には、宅建法が適用されない宅地建物は存在しない。
このため、宅建法の宅地建物について、売買行為や貸借契約の媒介を反復継続すれば、誰の行為であっても宅建業となる。

宅建法の適用除外者が、宅建業しても、その宅建業には宅建法は適用されない。このことから、UR都市機構がする宅建業に宅建法は適用されない。なお、本件の場合は、自ら貸主となる賃貸借契約であるから、貸主であるUR都市機構の行為は宅建業ではない。

そこで、UR都市機構が管理する賃貸住宅の賃貸借契約を媒介(代理)する行為は宅建行為になり、宅建法の適用が除外される者の行為を除き、宅建業法が全面的に適用される。したがって、宅建業者がUR都市機構の賃貸住宅を媒介(代理)するときは、借主に対して重要事項説明しなければならない。また、宅建取引士の記名押印した賃貸借契約書を相手方に交付しなければならない。

 賃貸借契約の媒介(代理)とは、契約の当事者ではない者が賃貸借契約の成立に尽力することである。尽力する方法や程度、呼称や表現、有償行為か無償行為かを問わないと従来から考えられている。このため、賃貸借契約の申込希望者に対して、要望に応じ賃貸物件について個別情報を提供する行為、賃貸借契約の内容や契約条件についての説明する行為、契約希望者の個人情報の提供を求める行為、対象物件について見学案内する行為などは、媒介(代理)行為の一部であるため、これらの行為すれば媒介(代理)行為をしたことになる。ただし、宅建業務における媒介(代理)は、物件所在地における、従前からの慣習なども考慮されるため、法律学的な媒介や代理と内容が異なる場合もある。
 なお、定型的な情報を一方的に提供するだけの場合は、媒介(代理)に該当せず、単なる紹介(伝達)行為や広告行為である。

 宅建法の適用除外団体について、宅建法78条1項に国と地方公共団体を定めているが、UR都市機構のように自らの組織を規定する法律で宅建法の適用を除外する規定を定めている組織が多数存在する。これらの適用除外団体の行為にも宅建法は全く適用されないため、宅建法による行政処分を受けることもない。
一方、宅建業者の宅建行為には宅建法が全面的に適用される。このため、適用除外団体と宅建業者とで、同一の宅地建物について共同して宅地建物取引した場合には、適用除外団体は何らの制限もなく自由に営むことができる。しかし、宅建業者は全面的に宅建法の規制や制限を受けながら業務を遂行しなければならない。また、共同事業なのに宅建業者だけが宅建法違反で行政処分も受けることもある。


▇実例
◯ 放送局が電波を通じ、住宅に困っている人を対象として早急にその解決を計るため、貸家、貸間の紹介をし、貸主、借主の引き合わせのみを無料で行なう行為は、単に紹介する行為であって宅建法に該当しない(昭38年)。
◯ ある会社(第78条の適用されない会社)が大蔵省と委託契約を締結し国有財産である宅地建物の分譲をする場合、第78条の規定による国で行なうものと解することはできない(昭27年)。

▇参考
◯入居者募集業務(代理業務)について
(都市再生機構の賃貸住宅入居者募集業務に関する民間競争入札実施要項)
2(2)(UR賃貸住宅の使用関係の法的性格)
 UR賃貸住宅の使用関係については、機構の前身である日本住宅公団において「その入居者との間に設定される使用関係は私法上の賃貸借関係である」(最高裁昭和55年5月30日判決)とされており、一般法として借地借家法、民法の規定が適用されることから、一般に行われている賃貸借契約と変わりがない。従って、民間事業者が、自己の所有に属さないUR賃貸住宅について、自己の名で機構に代わって入居希望者に対して斡旋及び賃貸借を業として行う行為は、宅地建物取引業法第2条第2項における宅地建物取引業に該当する。なお、機構が自ら貸主となって賃借人を募集し、賃貸することは宅建業法の対象から除外されている。
2(6)ニ(入札の対象となる民活型募集業務)
 民間事業者は、機構が定める基準により入居希望者の資格確認を行うとともに、入居希望者に対して取引態様の明示(宅建業法第34条)、重要事項の説明(同第35条)、その他契約に重要な影響を及ぼす事項の告知(同第47条)等宅建業法の定めに従い、契約締結前に必要な説明等を行う。

◯宅建あっせん(紹介)制度について(宅建業者向け)
 2016年当時のUR賃貸住宅関東のホームページ【UR賃貸住宅 関東エリア】からの抜粋
 「宅地建物取引業者様のお客様がUR賃貸住宅の入居を希望した際にURの窓口に取り次いでいただく制度です。」「宅地建物取引業者様が、UR賃貸住宅をお客様にあっせん(紹介)されて、賃貸借契約の締結に至った場合、入居月家賃の1ヶ月分に相当する額と消費税を「あっせん依頼費」としてお支払いします。」「仲介ではないため、重要事項説明や契約などの事務手続きは不要です。」

▇私見
 UR都市機構の「宅建あっせん(紹介)制度」が宅建法の媒介ではないとは理解できません。宅建業者がUR都市機構が管理する賃貸住宅について「宅建あっせん(紹介)制度」により客付けした場合は、上記の理由により宅建業の一部を行ったと考えます。あっせん(紹介)者が重要事項説明をせず、契約締結に関与しない場合でも媒介を否定することはできないと考えます。
 なお、業務委託先を宅建業者団体の加入者に限定していることも妥当でないと思われる。また、公的な団体が支払う報酬額(あっせん依頼費)が、民間賃貸住宅の貸主が一般的に支払う額(賃料の0.5程度)を超えることに違和感を感じる。

注意 記述内容は個人的な見解で、法律学的に確立されてない内容もあります。実務で通用することを保証するものではありません


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